お仕事ミステリー?いや、これはヒューマンドラマだ。
書籍情報
タイトル:ナースの卯月に視えるもの
著者:秋谷 りんこ
出版社:文春文庫
発売年月日:2024年5月10日
あらすじ
完治の望めない人々が集う長期療養型病棟に勤める看護師・卯月咲笑。ある日、意識不明の男性のベッド脇に見知らぬ女の子の姿が。それは卯月だけに視える患者の「思い残し」だった――。彼らの心残りを解きほぐし、より良い看護を目指したいと奔走する日々が始まった。ナースが起こす小さな奇跡に心温まるお仕事ミステリー。
裏表紙より
感想
卯月が「思い残し」が視えるようになった理由。それが切なくて胸が苦しくなった。
もし、本当に看護師に「思い残し」が視えるなら、「思い残し」がいない人の方が少ないだろうと思う。
だから、日ごろから心のつっかえをそのままにしておかない方がいい。
自分の気持ちは伝えたほうがいい。どうしても伝えられないことは、自分の中でどうにかこうにか解決しておくしかない。
私はコロナが日本にやってきた年に体調を崩した。
まだ有名歌手がライブをするような、人口の多い都市で一人、二人と増えている時期で、私の住む県ではまだ発症した人はいなかった。
病院に行くと、コロナかもしれないと別室で待機した。
結果、コロナではなく、症状は原因不明だった。
そのときに看護師さんに言われたことが、私は忘れられない。
「お仕事頑張ったんだろうね。ちょっと頑張りすぎたのかもね。コロナかもって不安だったよね。だれでもなりうるから、違ったけど申し訳ないとか思わないでいいんだよ」
何も言っていないのに、私の気持ちをくみ取り声を掛けてくださった。
看護師さんも初めてコロナの疑いのある患者をみるのは不安だっただろう。
リスクがある中、治療だけでなく心のケアもする看護師さんは素敵だ。頭があがらない。
その後、仕事はやめてしまったけど、辞めるまでの1ヶ月は私もお返しがしたくて仕事をしていたように思う。
直接的に、その看護師さんにはお返しできないけれど、これからも周りの人を大切にしていく。
それが私のできることだと思った記憶がある。
人は忘れるもので、今回の小説を読んでより一層、私のできることを考えてみようと思った。
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