本日は、2021年6月11日公開の映画『キャラクター』
その第何稿目かのシナリオをもとに書かれた小説『キャラクター』の感想を書いていこうと思います。
映画『キャラクター』公式サイトはこちら
※後半からラストにかけてのストーリは、映画とは大幅に異なります。
漫画家デビューを目指してアシスタント生活を長く続ける山城圭吾は、ある日、「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチを頼まれる。前から気になっていたその家を訪れると、暗闇の中から大音響でオペラが流れていた。家の玄関ドアが開き、手招きに促されるようにして家の中に入ると、そこには殺害された家族4人の姿があった。
「ぼくの顔、見た?見ちゃったよね」
第一発見者となった山城は、その現場でひとりの人物を目にしていた。やがて、彼はその事件をモデルにした漫画でデビュー。家族4人殺人事件も続いていた。
長崎尚志
〇小説家、漫画原作者、漫画編集者
〇2010年、『アルタンタハー当方見聞奇譚』で小説家デビュー
〇『闇の伴走者醍醐真二の博覧強記ファイル』WOWOWで連続ドラマ化
〇ほかに、『県警猟奇犯罪アドバイザー久井重吾』シリーズ、『風はずっと吹いている』などがある。
自分に足りないもの
主人公の山城はホラーやサスペンスで勝負がしたかった。ただ、キャラクターが書けない。
アシスタントしている仲間からこんなことを言われる。
な、あいつの中には悪人が存在しねえのよ……だからサスペンスやホラーは絶対描けない。ほんとはさ、『スヌーピーとチャーリー』みたいなマンガが向いてるんじゃね?
ただ、そちらを書くとしても今度は画風が合わない。
一生アシスタントとして生きてくのか悩む。
事件が起きる
幸せそうな家をスケッチしていたとき、黒い影に手招きをされる。
入るとそこは血の海、殺人現場だった。
そして、自分の中にいなかった悪人が顔を出し始める。
ある有名な先生が言ってた。自分のキャラクターが勝手に動きだすらしい……紙の上の登場人物が作家を操るように
罪悪感と引き換えに
山城は、警察には犯人を見たことを黙っていた。
直後は覚えていなかったため、嘘ではないのかもしれない。
彼をモデルにした『34』というマンガで念願のデビューを果たす。
ここから彼の人生は少しずつくるっていく。
誰が見ても幸せな家族
あなたは、幸せな家族と言われてどんな家族を想像しますか?
この本の中では、幸せな家族を4人家族としている。
ただ、どの家族もどこか違和感がある。幸せではない雰囲気がとても不気味だった。
❝幸せな家族❞は本書の1つの隠れた1つのテーマなのかもしれない。
著者の経験から書けた作品
著者は、漫画原作者・漫画編集者であることから、この作品が生まれたのだと感じた。
マンガって正しいことは正しい、まちがってることはまちがってるってマジに言える媒体じゃない?悪は滅びて、いいもんは勝つ。そういうメッセージをバカ正直に残せる表現方法って、いまじゃマンガだけだろ?だからおれ、やっぱマンガ家になりたい
これは山城が父親に、そろそろ諦めたらどうだと言われたときに言うセリフ。
ここから著者の伝えたいことを感じた。
私は、漫画を読まない。だから漫画を読んでいたら、本書も違った視点から見ることができたのかもしれない。
たいせつなものは
大切なものを掴んだら、他の大切なものが零れ落ちていく。どれ一つとして選べなくて、どれが1番でもなくて。
そのなかで、最後は主人公が折り合いをつけていく。
私たちもここは山城と同じだろうと思う。
夢が叶いそうなとき、忙しくて恋人に会えないだとか。
罪悪感を抱えながらも、自分の気持ちを優先してしまったりだとか。
山城とキャラクターの戦いは、天使と悪魔の戦いのようにも思う。
あなたは、何を選んでいきますか?
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