イエスマンという呼び名は皮肉でも自虐でもなんでもない。上下関係や能力主義といった、どうしようもない大きな力に押し流されて日々を過ごしているような人たちが、内に秘めた「自分」を解放して誰かを救う。そんな奇跡を可能とする、ヒーローたちの呼び名である。
あとがきより
あらすじ
「なぜ頷くのかと言われれば、偏に楽だからである」木暮慧の唯一の取り柄は、理不尽な要求も「はい」と返答し、忠実にこなすこと。
そんな彼は、イエスマンぶりが高じて他人のどんな願いも実現できる特殊能力を手に入れる。
ある日、石畳と名乗る男が現れてその力を使い、謎の調査に協力しろと言われ⁉
ブラック企業に喘ぐ、気弱なサラリーマンが大活躍。
この本について
👑第2回エブリスタ×ナツイチ小説大賞受賞作
📚2021年ナツイチ対象本
・カバーデザイン:高橋健二(テラエンジン)
・イラストレーション:浅田弘幸
こんな人におすすめ
☆新しいヒーローのかたちの物語を読みたい
☆特殊能力系の物語が好き
☆自分に自信が持てない人
感想
本書は、連続する5話で成り立っている。1話につき1人を調査していく。
帯に書いてある“読むとスカッとする!”という感じはなかったが、新しいヒーローのかたちを知れた気がする。
普通に見えるあの人も、誰かにとってはヒーローなのだ。
組織に新しく入ると、初めのうちは「なんで?」と思うことが多い。
けれど、その組織にいる時間が経つにつれ、なんで?など考えることが無駄に思えてくる。
どちらにしろ、選択肢が「はい」しかないからだろう。
口で「はい」というのはいいが、心まで殺してしまうのは本書に出てくるイエスマンとは別者だ。
—意思を持て。自分の力でどんなことでもできるという意思を。人に従うことが、お前の価値じゃない。
周りの人からの呪いに「なんで?」を封印される前に、誰かの指示に「はい」ではなく、自分の意志に「はい」を。
あなたの「はい」に中身はありますか?
コメント